とりあえず僕たちは居酒屋に入った。
ビールで乾杯をして、一息つくと彼は話し出した。
彼が親しくしている農家仲間の間で被災地に何かを届けようという提案があった。
なにか自分に出来る事はないかと地震後ずっと考えていたらしく、
誰かが行かなければとなったところで、真っ先に彼が名乗りを上げた。
今から2週間前。
洗濯機と200リットルの容器を軽トラに積み込み一人高知を出発した。
ほとんど休まず高速を走り続けて東北に向かったらしい。
石巻に辿りつき、被災者の集まる場所に洗濯機を設置して
そのまま今日まで炊き出しなどのボランティアをしていたという。
軽トラも現地に置いて来たようで、本当は新幹線でそのまま帰る予定だったのだが
思わぬ渋滞に巻き込まれて今日は東京に辿りつくのがやっとだったらしい。
ケータイの充電がなくて連絡がこんな急な形になったのだとか。
4,5日風呂に入ってないという友人はとても身なりは汚かったが
写真と共に必死に現状を伝える姿は輝いて見えた。
僕も含めほとんどの人が何か出来る事はないかって考えたと思うけど
こうやって実際に動き出せるというのは本当にかっこいい。
平日の夜中に突然連絡してきてやってきて
仕舞には道が分かりづらいと怒りだした友人。
7年ぶりに会うのに最初はなんなんだと少し思ってたけど
話を聞くうちに、まあこういう形での再会も悪くないなと思えた。